ディティールに光線を逆立て刻み込まれた時間を浮き彫りにする。by Leica SL2-S

Reborn & Engraved 02

Leic SL2-S Works 02 / Engraved

 

Art Work Technique

1999年を最終型にHonda最後の2ストロークエンジン搭載オフローダーとなった「CRM250 AR」これを被写体とした。現代のオフロードバイクの倍ほどの馬力を持つ最強にして最後のマシンである。1999年に手にいれ、細かい傷や経年劣化を伴いながら一緒に走ってきた。よく見るとそういう年輪が刻みこまれ、そこに風格が生まれている。撮影のポイントはここにある。

新車の塗装が持つヌルッとした質感はもはや持っていない、あるのは攻撃的なフォルムと小傷や小さな錆を伴ったディティールである。20年余りを生き延びて刻まれた現代のマシンが持ち得ない凄み、これを再現する。通常大きな面光源で全体を平均的に照らし、そこから質感を作っていくライティングをするのが定番なのだが、あえて光を拡散させず、逆光のスポットライトをいくつも使い部分的にディティールを抉り出していく。エンジンや、フェンダー、チャンバーなど、一箇所一箇所に集光し、Engraved (刻み込まれた)歴史を浮き彫りにする。

ぱっと見の印象は綺麗な新車に見えるかもしれないが。実際の新車のカタログと比べてもらうか、高解像度の画像をみてもらえればその違いは歴然だろう。なんの歴史も持たない現代の新車と2スト最強の伝説を持つマシンの風格の違い。それを感じ取ってもらいたい。

Why LEICA SL2-S

ライカSL2-Sは超高画素機ではない。だがその総合的な写真表現力は「現代のリファレンス機」と言っても過言ではないものを感じる。

ダイナミックレンジ の広い24Mの裏面照射型センサーと凄まじい切れ味のアポズミクロンは被写体に刻み込まれた歴史まで引っ張り出し、それを写真の世界に表現していく。黒く締めるところはしっかりと締め、白く持ち上げるところはしっかりと持ち上げる、、欲しいところはしっかりとコントラストを付けて掴める様なボリュームを出してくる、それがライカSL2-Sの映像エンジンマエストロIIIの特性だ。

 


APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f11 1/80s ISO100

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f11 1/80s ISO100

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f11 1/80s ISO100

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f11 1/80s ISO100

最高のレンズが紡ぐ光をいかにそのままセンサーに導くか、それが一番大事なんだとライカの開発者が言った。我々のカメラが作り出すの画像はデジタルペインティングではなく、フォトグラフィーだと。そういう哲学に僕はグッときてしまうのだ。