写真を光の粒子に戻し被写体に着せていくby Leica SL2-S

Reborn & Engraved 01

Leic SL2-S Works 01 / Reborn

 

Art Work Technique

写真を被写体にプロジェクションして光源としても表現としても使う手段、この撮影方法を初めて思い付いたのはもう30年も前、日芸の学生の頃だった。当時はスライドプロジェクターで使うためにポジフィルムを使用していたが、その一度完成してフィルムという平たい物質になった写真を光の粒子に戻して被写体に着せていく感覚がとても面白かった。印画紙に写真を焼き付けるときに複数のフィルムを使う平面的な重ねのマルチプルイメージと違い、立体的な被写体のフォルムに合わせて光が纏わりついていく。一度2次元に定着した写真がもう一度違う形で3次元に戻っていくように有機的に表情を変え、被写体に唯一無二の表現をもたらす。

全く持ってフォトショップ以前の話だがそのレイヤーとも違うし、プロジェクションマッピングのように合わせ込んで表現するものとも違う。もっと被写体に光の風を吹かせ、その中で踊っているような自由さがある。今回はアンモナイトの写真を光の服に仕立て上げてモデルに着せて行った。アンモナイトの螺旋が水の波紋のように彼女のフォルムにまとわりつきその存在を有機的に彩る

自分の写真が新しい表現として生まれ変わっていくのだ。

Why LEICA SL2-S

ライカSL2-Sの「暗闇から目を見張るような被写体の表情を引っ張り出す」という特性がこの撮影にマッチすると分かった上での作品製作だ。この手法は実際に撮影用の光源を使うより光量が少ない、つまり高感度での撮影が必要になりその特性がモノをいう。しかもメインの全身カットにはSマウントの TSアポエルマーを使用、開放が暗いのを覚悟でフォーカスコントロールを重視した。絞り開放かつ高感度で、コマーシャルクオリティを引き出すというカメラには酷なセッティングで撮影設計を行った。裏面照射型24Mという解像度とダイナミックレンジ がもっともバランスの良いセンサーと、開放から最高にシャープなライカのレンズ描写をSL2-Sの映像エンジン「マエストロIII」がまとめ上げ、これを見事にやってのけたと言える。


APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f2 1/80s ISO800

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f2 1/100s ISO800

TS・アポ・エルマー S f5.6/120mm ASPH./f4 1/25s ISO3200 純正アダプターを使用してイメージサークルの大きなSマウントのレンズを装着すると、レンズの解放F値より小さな数字がexifに書き込まれていた。フルサイズに変換した口径比なのだろう。

TS・アポ・エルマー S f5.6/120mm ASPH./f3.4 1/40s ISO1600

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f2 1/100s ISO800

APO-SUMMICRON-SL f2.0/90mm ASPH. / f2 1/100s ISO800

TS・アポ・エルマー S f5.6/120mm ASPH./f4.8 1/40s ISO3200

Capture One21からテザー撮影が可能になった。

印象的なブラックのライカロゴは黒いボディ塗装にさらに黒い塗料で印字されているという。これを初めて触った時、SL-2SのSはステルスのSだと感じた。