以前の先生の個展で撮影させて頂いた作品の光を使用したポートレート
「グラフィックトライアル2012 おいしい印刷」展示作品。当時最高解像度のデジタルカメラで撮影した卵や野菜をモチーフにした作品。photograph by Akihiko Nagumoの文字が、、
6/2に最終日を迎えた「視覚の共振・勝井三雄」展にまさに最終日に駆け込みで足を運んだ。勝井先生は日本万国博覧会のシンボルマークなどのデザインを手がけた言わずと知れた日本を代表するグラフィックデザイナーである。
僕が初めて先生にお会いしたのは2009年ごろ、先生がデザインするKOMORIのカレンダー撮影だったと思う。印刷機を作っている工場の中で印刷機やそのパーツの歯車などを素材として撮影してほしいという事で一緒にロケを行った。その撮影を先生に気に入ってもらい、それから撮影のお手伝いをさせて頂けるようになったのだ。とても有り難く嬉しく思ったのは、僕が海外ロケで先生の撮影日程に合わないと「帰ってきてからでいいよ、」と他のフォトグラファーに振らずに待っていてくれたり、子供の出産日に重なってると言った時も、気にかけてくれていたこと。報告した時に「生まれたか!そうか」と嬉しそうに言ってくれた声をはっきりと覚えている。
その後、グラフィックトライアルの先生の作品の素材撮影を担当させて頂いたのだが、その時のポスターが完成した時に驚いたのはその美しさもさることながら左下に記載されたPhotograph by Akihiko Nagumoの文字、ちゃんとフォトグラファーとして認めてもらったようで思わず目頭が熱くなったものだった。撮影したものは野菜や卵(崩れないようにヒビを入れて透過光でそれを光らせたいという痺れるオーダーが突然発生し、必死に撮影!!)なにせ素材撮影とは言え拘りがすごい、まず今世の中にあるカメラの中で一番解像度の高いカメラを用意してくれ、それで撮りたい。から始まり、野菜の形や表情を選ぶのも、卵にいれるヒビの形状も、徹底的に先生が納得いくまで全力で撮影させてもらったのだった。本当にいい経験だった。膨大な作品が展示された「宇都宮美術館 視覚の共振 – 勝井三雄」展の会場にはそんな作品たちも立派に展示されいた。
その数年後、僕自身もグラフィックトライアルの作家として作品を製作し、東京ミッドタウンのデザイン・ハブで行ったグラフィックトライアル・コレクションやグラフィックトライアルHONGKONGで一緒に作品を展示できたのも光栄な事であった。
さて。今回この展示を見て、やはりというか当然というか、格が違う、凄まじい仕事量とブレないコンセプト。勝井先生の生まれてから今に至るまでの年表が展示されたいたのだが携わった仕事、関わった人々、立ち上げた組織や、受けた表彰、、もう、本当に凄まじい。。
先生は本当に気さくで僕の個展にも一人でふらっと現れたり、サイン本をくれたりするのだが、こういう偉大な人と関わりがもて、(流石に年表に僕の名前は無かったが(笑))一緒にお仕事をしたことを改めて嬉しく思うのであった。
宇都宮で食べた餃子はあまり美味しく無かったが(2件はしごしたのに)、新幹線で向かった美術館で過ごした時間はすごく有意義であり、大事な記憶として残る小旅行となった。
初めて一緒に仕事させて頂いた印刷機や歯車をモチーフにしたポスター
僕の個展に来て頂いた時のツーショット
追記 2019/8/20
8/19日に勝井先生が亡くなったと訃報を受けた。享年87歳、8/12にご自宅で息をお引き取りになられたとの事だった。
この個展を見にいった日に予定されていたトークショーにも先生は体調不良でいらっしゃらず、とても心配をしていたのだ。
当日お会いできなくて残念だった事、自分が撮影したポスターが展示されていてとても嬉しかった事などをお伝えしたメッセージに対して、
「Katsui Mitsuo よく来ていただきました、こちらこそお会いできず、申し訳なく残念です。本当にありがとうございました。」と返信をいただいていて、またお会いできる日を楽しみにしていたのだが残念でならない。
心よりご冥福を申し上げます。勝井先生、本当にありがとうございました。
勝井先生が審査委員長をされていた全国カタログポスター展表彰式にて、僕の撮影した図録写真集「BRASIL」がグランプリをいただいた時の写真。